Grafting 接ぎ木 アーティストトーク

Grafting 接ぎ木 アーティストトーク

出展作家:加藤巧、鈴木雅明、鈴木悠哉、山本雄基
ゲストスピーカー:拝戸雅彦(愛知県立美術館 企画業務課長)

トークについて:
2019年8月24日(土)−9月16日(月)までnaebonoにて開催された『Grafting 接ぎ木』札幌展の、
初日8月24日17時から、展覧会についてのトークが行われました。
ウェブ用に修正を加え、全3回に分けて、
そのトークの内容を紹介します。

遡ること同年2月には、
愛知県瀬戸市のArt Space & Cafe Barrackでも同じメンバーで展示とトークがありました。
Barrackのサイトでは瀬戸展の詳細も掲載されています。
(『Grafting 接ぎ木』 瀬戸展展示アーカイブ)
瀬戸展と札幌展では、展示もトークも違った内容が展開されましたので、
ぜひ合わせてご覧ください。

 

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第1回 「Grafting 接ぎ木」札幌展 の概要説明
第2回 各作家の作品について
第3回 クロストーク、質疑応答

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第1回
「Grafting 接ぎ木」札幌展の概要説明


(左から鈴木雅明、鈴木悠哉、加藤巧、山本雄基、拝戸雅彦)

山本:
今日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございます。
「Grafting 接ぎ木」という企画展が、なえぼのアートスペース1階フリースペースで今日からスタートしました。
この展示は2019年の2月に、4作家のうちの1人である、愛知県で活動されているペインターの鈴木雅明くんの企画で、愛知県瀬戸市のArt Space & Cafe Barrackで行われた展示の巡回展です。

僕は前回、雅明君に瀬戸に呼ばれた立場だったので、
向こうでの展示に手応えを感じてすぐに、今度は逆に雅明君ごとこの企画全部を札幌にも呼んでみたいという興味が湧いてきました。
こういう関係の枠組みを単発で終わらせてしまうのは勿体ないし、参加作家が勝手に動き始めたり、場所と場所を行き来しあうのもまた「接ぎ木」的なのかな、と色々なことを拡大解釈して、僕の方から巡回という提案をさせていただきました。
僕がここnaebonoの運営に関わってるのでスペースの使用も自由がきくし、皆さんにも提案を受け入れていただいたので、今回展示が実現して、皆さんにもお越しいただきました。

鈴木(雅):
ありがとうございます。じゃあここからは僕の方で進めていきたいと思います。
今山本君からご紹介いただいた鈴木雅明といいます。
僕は愛知県で活動している作家で、今回札幌で展示できる、となったことで
ちょっとびっくりした反面、かなり楽しみにしていました。
で、一応最初に企画の趣旨の方から順番にお話しさせていただければなと思います。

最初に今日のトークの参加メンバーの名前を言っておきます。
まず僕が鈴木雅明で、横にいるのが鈴木悠哉さんです。その横に加藤巧さん、山本雄基さん。
で、拝戸雅彦さん、愛知県美術館から今日はお越しいただきました。宜しくお願いします。

まず最初に、今回巡回という話が山本くんからありましたが、
元々僕がこの企画を立ち上げた経緯というか、趣旨を説明していきたいと思います。

僕は「描く」ということ、「絵画」というものに興味をもって制作してきました。
制作について悩んだり、試行錯誤を繰り返したりしながら、自身の制作を続けてきました。
この展覧会というのは僕の個人的な動機からスタートしていて、

自分が興味を持っていた、観たいと思った作家にお声がけをして、一緒に展示をしてみることで、
自分の立ち位置、どういうところに自分がいるのかを見てみたいという、
制作上というか活動上の悩みというのが動機になっています。

どういう人たちをどう選んだのか、というところなんですけど、
基本的に僕が面識があるかないか、ていうことではなくて、
作品実物を実際に見ているかどうか、ということを第一に、作家を選ばせていただきました。

自分が作品を見ていて、その作品にすごく興味を持っていて、
実際にもう一度作品を見てみたいし、話をしたり、関わってみたいと思った方に声をかけています。

今回依頼したのは、展覧会への参加という依頼で、展示作品に関してはこの「接ぎ木展」のために、「こういう作品を出してください」という指定はせずに、日常の制作、作品を出していただければということでお願いをしています。
基本的にそのフレームは今回も変わらないままです。だから今回巡回するからこういうふうにしましょう、ということもなかったです。

展覧会のタイトルは「Grafting」で「接ぎ木」という日本語が入っています。
「Grafting」は「接ぎ木」の英語なんですが、接ぎ木というのはどういうことか、というと

単純に、植物を栽培していく中で2個以上の別の植物をくっつけてしまうという技術なんですけど、植物を切って、そこをくっつけると、つながることがあるんですよね。そこで植物がまた成長を始めるという現象です。僕のイメージだと、サボテンで、細長い緑色のサボテンの上に、赤い丸っぽいサボテンがポンと乗っているようなサボテンが、ホームセンターなどで売っているのをご存知の方もいらっしゃるかと思うんですが、それってまさに「接ぎ木」という状態で、別のサボテンとサボテンをくっつけた状態で、でもどちらの存在もなくならない、という状態のまま成長が進んでいく、という状態なんですよね。

今回の展覧会の構造、特に何かつながりがあったわけではない状態で僕が強引に依頼をして囲い込んだ、僕の興味の元に繋げてみちゃった状態があり、どういうものが生まれるかを見たいという思いから、その状況を「接ぎ木」という言葉に重ねたいと思い、設定しました。

巡回するということで、またその接ぎ木的な状況にどういう変化が生まれるのか、僕自身見てみたいという思いから、この依頼をお受けしています。

今日のトークでは、前半部分では各作家さんから今回展示している作品についての話を中心に話してもらって、その後拝戸さんを交えて、全員でクロストークという形にしていければな、と思っています。

第2回へ続く→